単独インタビュー第18弾「THE MASH TUN TOKYO 鈴木 徹氏を迎えて(4)」
K:Q3、ウイスキーの嗜み方、又気を付ける事はございますか?こちらも聞かれる事だと思うのですが。その事を教えて頂きたい事と、お客様の事についてお話し頂くのも宜しくないかもしれませんが、鈴木さんが、うーんと思われてしまう、飲み方、嗜み方につきまして。
鈴木さん:そうですね、これはある程度自己流で宜しいのではないかと、嗜好品ですからね。こういう飲み方じゃないといけないとかはないと思っているんですよ。
K:ええ。
鈴木さん:1杯1万円するものをライム搾ってジンジャーエールで割ってもね、その人がいいって言うなら良いと思うんですよ。ただ僕は作りませんけれどね(笑)。
K:ええ、はい(笑)。
鈴木さん:だからそういう注文をして来るバブリーなお客様は嫌いですね。まぁ、実際にいたんですけど(笑)。
K:(笑)。
鈴木さん:個人的には「こいつはバカか」と思いますね。ただ、まぁ、極端な話その方がそれで良いというのなら、それでもいいと思うんですよ。僕は注文されても断りますけど。
K:確かに。
鈴木さん:それもその人の経済感覚なんだから、安いブレンデッドがジンジャー割にして旨いかどうかいうのは別にして、いつもそれを飲んでいる方が、お金持ちになってベースのお酒を高級なのにしたらもっと美味しくなるんじゃないかなと考えるかもしれないんですよね、確かに。
K:ええ。
鈴木さん:いいんですよ、マッカランの50年をジンジャーエールで割っても、コーラで割っても良いんですよ。これを12年より美味いねという風に本当に思えれば、それで良いわけなんですよ。その対価として1杯に10万、20万払えるなら良いんですよ。僕はやらないけど。まぁ、極端な話になりましたけど、個人的にはそういうのは嫌いだよという気持ちと、嗜好品なんだから本人がそれが良いと思えば何でもアリなんじゃないかなと言う気持ちと両方持ってるんですよ。ホントに極端な話をすればという事ですよ。
ただ、ホントに旨いかどうかで判断してるんじゃなくて、いかにお金を持ってるかというのを自慢したいだけの飲み方だったら、もったいなさ過ぎるなというか、残念だなと思いますけど。
K:はい。
鈴木さん:自分のお勧めの飲み方はあくまでも自己流なんですが、もちろん自分の飲み方が1番のお勧めだと思っているので、うちでお勧めする飲み方は、やっぱりストレートですよね。ストレートでもどうしてもちょっと口当たりがきついなと思えば、ちょっとずつ加水をしていって飲みやすくしてもいいし、自分もテイスティングコメントでも書いていますが、ちょびっと入れたのと、沢山入れたのだとやっぱりどんどん変化していくんですね。その変化を楽しんでいって頂ければ良いかなって思うんですよね。またトワイスアップが1番正しい飲み方なんだと言われる方も少なくないんですけれど、もちろん間違ってはいないと思うんですけれど、僕の考え方だといきなり1:1にするのは乱暴かなと思うんですよ。
K:はい。
鈴木さん:もしかしたらウイスキーもね、人間も十人十色ですから、ウイスキーも10本あれば10本個性があるので、どれも美味しいコンディション、香りが開くコンディションってポイントが違うと思うんです。加水をされたい方には、言っていただければ水差しを付けますから、ちょっとずつ加水していって頂いて、ここが1番旨いと思う所で飲んで頂くのが1番うれしいな思います。最初から1:1になっちゃうと行き過ぎちゃうかもしれませんしね。
K:そうですよね。
鈴木さん:行き過ぎちゃったら戻らないんで、水を加える事は僕にもお客様にも出来るんですけれど、1回加水してしまったものは誰にも元に戻せないんで。もし加水されるんだったらいきなり1:1ではなくて、ちょっとずつ足していって変化を楽しんでいって1番良いポジションで飲んで頂けたら1番良いなと思います。勿論加水しないで飲んで頂ければ、それはそれでよろしいのではないかと思うんです。アルコールのアタックも味の内だと僕は思っているんで。また、アルコール度数のすごく強いのなんかは、その高いアルコール度数で何とかバランスを保っていて旨いものなんかも多いんですよ。そんなのは加水するとバランスが一気に崩れてしまって、ちょっと残念な感じになってしまうものも結構多いんですよ。基本的にはやってみないと分かんないんですが(笑)。それも踏まえて全部まるごと楽しんで頂ければいいなと思います。必ずしもストレートが1番良いとは言いません。
K:それが鈴木さんのお勧めの飲み方ですか?
鈴木さん:勿論お勧めですね。加水するなら徐々に加水していってベストなポイントを見付ける事、いきなり1:1にはしない。これはあくまでも僕のお勧めであって、人によってその考え方も色々あるんでどれが正しいとも間違っているとも言えないです。優柔不断ですいません(笑)。
K:はい。
鈴木さん:僕がプライベートで飲む時はまたちょっと違って、加水しない代わりに放置するんですよ。
K:ええ、少しの時間ですか?
鈴木さん:注いで、まだこれはちょっとアルコールが立っているなとか、香りがあまり開いていないなと思ったら、ちょっと飲んで放置して、次行こう、次って(笑)。次のを飲みながら、ちょっとしてからチェックしてみると丁度いい具合になってそっちに戻って飲んだりみたいな事はやりますね。場合によってですが5分から30分くらい。結構バラバラかも。
K:最高で何時間?どの位放置された事があるのですか?
鈴木さん:例えば、よっぽど度数が高いとかアルコールがツンツン来ている時には普通に20~30分置く時も多いですし、営業時間前とか営業中にテイスティングをした時なんかは、ちょっと硬いなと思うとハーフショットくらい注いだ状態でカウンターの上に置いて2時間位放置という事もざらにあります。
K:ええ!
鈴木さん:それは2時間位置いておきたいから置いていたわけではなくて、たまたま忙しくて飲めなかったとか。
K:ええ。
鈴木さん:飲む時間がなくて置いちゃったということで、実際2時間位経ってから「おお旨いね」というのもあるので、実際の所は30分位でも飲み頃になっていたかもとは思うのですが。
K:(笑)。
鈴木さん:なので、僕は放置派ですね。加水して強制的に起こさせるよりも放置する方ですね。お客様にも時々その話はしますよ、あくまで僕の個人的な飲み方の例としてですが。実際に同じような飲み方をするお客様も結構お見掛けします。
K:ええ。
鈴木さん:鳴くまで待とう、の方ですね。
K:はい。何となくウイスキーは、
鈴木さん:鳴かせてやろう、じゃなくて。鳴かせてみせよう、ではなくて、鳴くまでまとう、ですね。
K:はい。
鈴木さん:ウイスキーはスタンダードだって10年とか12年とか樽に入っているんですよね。それに長熟のだと30年、40年なんてのもいっぱいあるんですよ。例えば20年とか30年とか樽に入っていたのをね、ボトルからグラスに注いですぐに、バランスが良いとか悪いとかっていうのはどうなのかと思うんです。
K:確かにそうですね。
鈴木さん:せめて5分、10分待っても罰は当たらないですよ。というか待ってあげたいですよね、だってそのウイスキーはもしかしたら何十年も樽の中やボトルの中で出番を待っていたんですから。
K:そうですね。仰る通りですね。 (5へ続く) (3へ戻る)
※次回掲載予定日 3/8(金)
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