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単独インタビュー第20弾 新年企画「Shot Bar Zoetrope オーナー堀上 敦氏を迎えて(4)」

14 3月 2014 2,176 views No Comment

 

 

 

 

 

 

 

 

K:Q4、ソサエティに新たに、秩父、羽生、軽井沢が入りました。その事については、いかがでしょうか?「来ました!」、という感じでしょうか?

 堀上さん:秩父は「来ましたっ!」ですし、待っていましたけれど、閉鎖された蒸溜所が来るっていうのは想像していなかったんで、「え?」と驚きましたね。

 K:軽井沢に関しては、ウイスク・イーさんが全部買われたのですよね?

 堀上さん:残っている樽は、ナンバーワンドリンクさんと。ま、どちらもデヴィッド・クロールさんですから。

 K:ええ。

堀上さん:だからそういう経緯で言うと軽井沢は来てもおかしくないですけど、閉鎖されている蒸溜所に番号を振るとは思わなかったので、凄くびっくりしたんですよ。発表になった日にデヴィッドさんにそのお話をお聞きして、「まさか羽生、軽井沢が来るとは思わなかったですよ」って言ったら、「ある意味歴史的な事実として、ソサエティで番号を持っている蒸溜所という位置付け、このまま消えてしまうのではなくて、ソサエティのリストの中で番号を持っている蒸溜所である、と。仮に1本しか出せなくても、ソサエティが番号を振る位のクラスの蒸溜所だったんだよ」、というのを「歴史として残したいんだよ」、とデヴィッドさんが仰っていらしたのが印象的でした。

 K:凄い思い入れが、

 堀上さん:そういう風に思って、羽生も軽井沢も番号を振って頂いているんだったら、それはすごく良い事だなと。だからもしかしたら、羽生はあれ1本しか出ないかもしれないし、もしかしたら後何本か出て来るかもしれないです。分からないですけれど、たとえ1本であっても、意味のある事なんだなと思いました。

 K:20周年の時の発表でしたものね。

 堀上さん:そうですね。

 K:以前からそういう噂は出ていたのですか?というのか、ご存じだったのでしょうか?皆さんとしては、いつか秩父は、と思われていたのでしょうけれど。

 堀上さん:ええ。僕は知らなかったですけれど、直前にあったウイスキーフェスティバルの会場でデヴィッドさんとすれ違ったんですよ。その時に「20周年のテイスティング会来ます?」って仰られて、「今は予定ないんですけど」ってお答えしたら、ニヤッと笑って、「堀上さん、来た方が良いと思うなー」って言って通り過ぎて行ったんですよ。

 K:ええ。

堀上さん:それ以上は何も仰ってないんですけど、「何かあるな、きっと“秩父”だな」と思ったんですよ(笑)。僕はソサエティのテイスティング会は普段そんなに行かないんですけど、何かあるんだろうな、って思って。そしたらその前日に、マルスの本部長がうちのお店にいらしていて、「明日ソサエティのイベントに行くんですよ」って仰るんですよ。「マルスさん、何かあるんですか?」とお聞きしたら、「私はただ行くだけですけどね」って。又微妙な言い方を(笑)。

 K:これは、と?

堀上さん:その何日か前のフェイスブック上に、テイスティング会にサントリーの輿水さんもいらっしゃるって話が流れていたんですよね。輿水さんがいらっしゃって、マルスさんも行かれる予定で、「堀上さんは来たほうが良いかも~」ってなんだろう?「それでは行かなくては」と。

 K:良い情報でしたよね。

 堀上さん:そうですね。イベントが始まる直前に、会場の前の方で、伊知郎さんと輿水さんと山下さんとマルスの折田さんとデヴィッドさんとご歓談している瞬間があったんです。それを見て「写真良いですか?」って撮ったら、周りにいる人達も「私たちもついでに」と何人もがゴージャスな写真を撮ってました。

 K:中々ないですからね。ウイスキーライヴ等で皆さんがご一緒する時はあっても、そちら以外では、凄いですよね。参加出来なかった私は、良いなと思いながらFBを見ておりました。

 堀上さん:(笑)。

 K:あーっと思いながら((笑))。早速次でございますが、Q5、今高まるジャパニーズ・ウイスキーに熱に一言、何年位ですか?高まってから。

堀上さん:その質問難しいですね。

 K:私は散々言っていますが、竹鶴12年で感動して、そこから美味しいなと思った事がウイスキーに興味を持った始まりでした。ジャパニーズ、全てを知りきっているわけではないのですが、親しみを持ったウイスキーの為、勿論賞を取られたという事もあるでしょうし、品質もそうですし、繊細さもそうですし、と言われる事もあると思うのですが、意図してではなくて、こう皆さんが盛り上げているのか、支持が厚い、のか、いかがなのでしょうか?

堀上さん:いつ頃からかって言うと、2000年代になって「山崎」や「響」、「竹鶴」などが色々と賞を取る様になって、そこに持って来て2005~6年頃の英国の『ウイスキーマガジン』誌のジャパニーズ・ウイスキー特集の時に、いきなりイチローズモルトさんの「キング・オブ・ダイアモンズ」と「Vintage1988」がゴールドとシルバーを獲得したのが、ある種境目だと思うんですよね。あそこで評価されるまで、皆注目していなかったと思うんですよ、羽生蒸溜所を。「Vintage 1988」と、カードシリーズの前に出ている「Single Cask 2000」を飲んで、僕は素晴らしい!と思っていたのですが、バーテンダーに「イチローズモルトって知っています?」と聞くと、いかにも飲んだ事ないんだろうな、というリアクションがあって、ほとんどの方がネガティブな事を仰ってたんですよ。それがカードシリーズの最初の4枚がリリースされて、その時に「あれ?これって凄いんじゃないの?」って思う方が出て来てきたと思うんですよ。

 K:はい。 

堀上さん:当時、池袋の「もるとやさん」で飲んでいたら、カードを1本ずつ入れたら、評判が良くてすぐ空いちゃったよっていう話をされていて、一部で評価している人が増え始めているって思ったんですよ。でもまだ全然知名度ないですし、そこからじわじわとっていう感じですよね。

K:こう言うと、失礼かもしれませんが、伊知郎さんのひたむきな活動とひたむきさが、底上げした部分があると思うのですが...。

堀上さん:それはあると思いますよ、やっぱり。伊知郎さんは「今のうちがあるのは、サントリーさんとニッカさんがあるからこそ」と仰る。勿論、その通りだと思いますし、サントリーさんとニッカさんが、日本のウイスキー市場、ウイスキー業界を支え続けていたから伊知郎さんも出て来られたのだと思いますし、マルスさんも再開出来たし、明石もシングルモルトを発売するようになったし、色々とあると思います。でも支え続けた大手さんがあったからこそ出て来られたんだけれど、それをブームと言うか、盛り上げる起爆剤になったのは伊知郎さんであるのもまた事実、だと思いますね。

K:ええ。お名前をね、下のお名前をイチローズモルトという形で出すというのは、竹鶴、岩井、というものがあって、苗字ですよね。ましては、漢字ではなくて、Ichiro`sですからね。皆が分かり易い、と言うのか、読めますものね、ローマ字にしているので。お名前なのね、と当初は思いましたもの。

堀上さん:そうですね。地名か苗字がほとんどですからね。最近は言われる事少なくなりましたけれど、‘イチローズモルト’ってラベルが一杯並んでいるのを見て、「マスターの名前が一郎さんなの?」と、「違います、違います」と(笑)。そういう事があって。

K:(笑)ええ。 

堀上さん:だって、こんなにイチローイチローって書いてあるんだから、あんたがイチローなんじゃないの?と。いえ、僕じゃないんですよって(笑)。

K:そこからお話が始まって、伊知郎さんのお話になるのですか?

堀上さん:そうですね。そこから「イチローさんて人が作っている埼玉のウイスキーがありましてね...」って話になる。これも他のお店でもよくあることだと思いますけど、「へぇ、イチローはウイスキー好きなんだ。彼はウイスキーのセレクションもするの?」って。それもまた「いや、野球のイチローじゃないんです。違います」って(笑)。

K:そうですよね。マイケル・ジャクソンさんを聞いて、思う事と一緒ですよね。一般の方は、歌手のマイケル・ジャクソンさんだと思うわけですしね。

堀上さん:そうですね。 

K:色んな方とのお話の場面ではなく、ウイスキー繋がりの方々やBarでご一緒している方々、ある意味狭い中ですといちろうさんとは、伊知郎さんしかいないじゃない、という感覚でいるから、初めての方が、いちろうさんって、あのいちろう?となったら、「え、何?」と思ってしまっている位になってしまっている自分が怖いですね。

堀上さん:そうですね。イチローって聞いたら、野球を思いますからね、普通の人は。

K:そこで伊知郎さんは伊知郎さんでしょ、と思ってしまう、

堀上さん:世間とずれている所が(笑)ありますからね。

 K:そうですよね。

 堀上さん:じわじわとサントリーさん、ニッカさん、あとメルシャン軽井沢もそうですし、2000年代入ってからずーっと賞を取っていた事っていうのが、ワールドワイドに、「何?日本のウイスキーって凄いの?」と着実に浸透させたというのもあると思うんですよね。海外で「良い」という評価を得ると、国内での評価が上がって行くという不思議な国ですからね、日本は。

 K:確かに。

堀上さん:よく海外からのお客様から、「2000年代になってから日本のウイスキーがやたら賞を取るようになったのは、あれは何があって賞を取るようになったの?」と聞かれるので、サントリーの輿水さんにお聞きした事があるんですよ。

K:はい。

堀上さん:僕には上手く説明が出来ないんですが、何でなんでしょうか?と。そうしたら、輿水さんがざっくりとした話をしてくださって、「サントリーに特化して言うなら80年の大改修があって、特に山崎のポットスチルを入れ替えたことによってお酒の質が良くなった。それが熟成して賞を取るほど良い出来になった」と仰るんです。なるほどと思ったんですが、それは本当にサントリーさんだけの理由。では、ジャパニーズ・ウイスキーが全体的に評価されるようになった理由はなんでしょうとお聞きしたんです。
そうしたら、「日本のウイスキーを作っている人たちは、ニッカさんもそうだと思うけれど、自分たちのウイスキーがそこまでのレベルにあると思っていなかった。」と仰るんです。

 K:ええ、ええ。

堀上さん:だからコンペティションに出しても、自分たちが賞を取れるって思っていなかった。でもサントリーさんが‘試しに’と出品してみたら見事に受賞してしまったと。で、他の会社も、「あれ?俺たちは今、もうそのレベルにいるの?」と。自分たちが良い物を作っている自信はあっても、賞を取れるほどの位置に居るとは思っていなかった。じゃあ、うちの会社も試しに出してみようと、各社コンペティションに出すようにしたら、次々と賞を獲得してしまった。それで「知らない内に俺たちはここまで来ていたのか!?」と。じゃあ出そう、うちも出そうって、出してみたら皆がポコポコ賞を取ったというのが正解。だから2000年頃に何かがあった訳じゃなくて、ただ気付いただけなんだよって。(5へ続く)  (3へ戻る)

 

※次回掲載予定日 4/4(金)

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