ウイスキージャーナリスト 西田 嘉孝氏に2023.9.3(日)開催 Whisky Concierge15周年パーティーについて記事を書いていただきました。
「Whisky Concierge」15周年記念パーティー
去る9月3日に開催された「Whisky Concierge」(当サイト)の15周年記念パーティー。会場となったパークホテル東京のスカーレットルームに集ったのは、サイトを運営するKaoriさんが2009年から開催する「女性ウイスキーの会」の仲間たち。
Kaoriさんが「より多くの女性にウイスキーの魅力を知ってほしい」との思いから立ち上げた同会は、都内のバーなどを会場に、ウイスキーへの深い造詣を持つバーテンダーが選ぶ5〜6種類のウイスキーを、女性だけで集い愉しむというもの。ほぼ月に1度のペースで現在までに150回以上が開催され、提供されたウイスキーは700本以上、100 名近い女性ウイスキーファンが参加している。
「会を立ち上げる頃にお店に来てくださったのがKaoriさんとの出会い。ご自身のウェブサイトでバーやウイスキーに似合うネイルを紹介するなど、当時は男性のものだったウイスキーを女性視点で紹介するKaoriさんの活動はとても斬新なものでした。参加者は女性限定で、バーテンダーが選ぶウイスキーが主役。ずっとそうした軸をぶらさずに会を続けてこられたのは凄いことだと思いますし、何よりも多くの女性にウイスキーの魅力を伝えたいというKaoriさんの情熱は素晴らしいと思います。Kaoriさんの温かな人柄に惹かれて集うウイスキー好きの女性たちが、穏やかに、そして優雅にウイスキーを愉しめるのが『女性ウイスキーの会』の魅力。これからもずっとこの会が続いて欲しいと願っています」
ドレスアップした女性たちが集う華やかな会場で、そう話してくれたのは西川口のウイスキー&ビアバー「CASK AND STILL」の山口貴子 さん。「女性ウイスキーの会」の発足当時からKaoriさんの活動に協力を惜しまない、ウイスキー仲間であり盟友だ。
当日は唯一の男性ゲスト(筆者を除く)として、サントリー株式会社名誉チーフブレンダーの輿水精一さんも参加。蒸留所見学やセミナーなども実施する「女性ウイスキーの会」では、過去に輿水さんをゲストに迎えた会も開かれている。
主役であるKaoriさんの短い挨拶の後、パーティーの冒頭ではそんな輿水さんから15周年に寄せた温かな祝辞がKaoriさんや参加者に向けて述べられた。
「この会を15年も継続されてきたことは本当に素晴らしいこと。私もブレンダーとして色々な場所でセミナーなどを行ってきましたが、飲み手の方々に正確な情報や私たちの思いをダイレクトに伝えるコミュニケーションや情報発信は、とても重要なものだと思っています。また、私自身もかつて著書に書きましたが、『これからのマーケットは女性が決めていくものであり、女性に評価されないウイスキーに未来はない』という考えを持っています。そうした意味でも、この「女性ウイスキーの会」のような活動は、我々のようなウイスキーのつくり手にとっても大切なもの。皆さんにはこれからも色々なウイスキーを飲んでもらって、時にはつくり手を叱咤激励していただけると、日本のウイスキーのさらなる発展にも繋がるのではないかと思っています」
そう祝辞を述べた輿水さんには“お誕生日おめでとう!!”のタスキが。参加者たちの笑顔に満ちたアットホームな会では、「Whisky Concierge」のプライベートボトリングである「秩父モルトドリームカスク♯2511」をはじめ、スペシャルリリースの「ラガヴーリン12年」や「カバランソリスト」、「白州12年」や「山﨑リミテッドエディション2021」、ガイアフロー静岡蒸溜所の「洋酒堂 友の会」向けプライベートカスク、シグナトリービンテージのアンチルフィルタードコレクション「リンクウッド2012 10年」など、Kaoriさんを中心に会を支援する方々が持ち込んだボトルをお1人ハーフショットのスタイルで提供。大森のバー「テンダリー」の宮﨑 優子さんからは、同店の25周年記念にボトリングされた「レダイグ12年」もサプライズで提供された。
錚々たるウイスキーと、「竹鶴」と「響」をそれぞれに練り込んだ生チョコレートをはじめとする、ウイスキーに合うスイーツやフード類。それらを片手に参加者が会話を弾ませる会場を満たすのは、どこか温かで優雅な雰囲気。そんなパーティーでは、会のメンバーであり台湾のカバラン蒸留所公認ブランドアンバサダーである、櫻井悠奈さんによる「カバランスペシャルセミナー」も開かれた。
セミナーでは、2023年の東京ウイスキー&スピリッツコンペティションで最高金賞を受賞した「カバラン ディスティラリーリザーブ ピーティカスク」を、参加者全員でテイスティング。櫻井さんからはカバランの特徴はもちろん、同社のウイスキー事業以外の多岐にわたる取り組みや今後の展開なども明かされ、質問コーナーでは輿水さんによる貴重なカバラン評に会場が盛り上がる場面も。終始笑顔が絶えない和気藹々としたセミナーの雰囲気も、気心の知れた参加者が集う「女性ウイスキーの会」ならではのものだろう。
主役のKaoriさんを中心に、時を惜しむように参加者たちがウイスキーと料理を片手に交流し、それぞれに充実したひと時を過ごした15周年記念パーティー。会の終盤では、「テンダリー」の宮﨑 さんも同会のメンバーを代表して祝辞を述べた。
「15年前というと、まだ女性だけでなく男性でもウイスキーを召し上がるお客様は多くありませんでした。そんな頃にお店に来てくださったKaori さんから『女性ウイスキーの会』を立ち上げると聞いて、素晴らしいなと思ったことを覚えています。Kaoriさんはお酒関係の仕事をされているわけでもなく、純粋にウイスキーの魅力を多くの女性に伝えたいという情熱だけで、そこから15年間もこの会を続けてこられました。私たちバーテンダー以上にウイスキーの魅力を多くの女性に伝えてくださったのではないかと思いますし、本当に感謝しています。これからも20年、30年とこの会が続くように、私もできることがあれば協力したいと思っています」
そんな宮﨑さんからの心温まるメッセージに続き、最後はKaoriさんが参加者への感謝と結びの挨拶を行った。
「私はニッカウヰスキーの竹鶴12年をバーでいただいて大好きになり、初めて酒屋さんに行ってウイスキーを購入しました。その後、輿水さんにお会いする機会があり、いま思えば大変失礼なのですが『ニッカウヰスキーが好きなんです』とお伝えしたところ、『美味しいですよね』と本当に穏やかに答えてくだり、サントリーさんのお薦めを聞くと『白州18年が美味しいですよ』と教えてくださいました。それからは『白州18年』も私の大好きなウイスキーになり、輿水さんをはじめとするウイスキーの世界の温かな人たちと知り合ううち、もっともっと色々なウイスキーに出会いたいと思い、今に至っています。女性でいると人生で色々なことがありますが、女性だからこそ職業も年齢も関係なく、ただウイスキーが好きというだけで多くの方と繋がれる。そのような場になればいいなと思い、この会を開催させていただいています。15年間続けてこられたのも、本当に皆さんとのご縁とご協力があってこそ。今後も「女性ウイスキーの会」を続けていきたいと思っていますので、これからもぜひよろしくお願いいたします」
Kaoriさんのそんな言葉で閉幕した「Whisky Concierge」15周年記念パーティー。今や全国各地で開催されるウイスキーイベントでは、多くの女性ウイスキーファンの姿が見られ、バーで女性がウイスキーをオーダーする光景も当たり前のものになっている。15年前には“男性が飲む酒”というイメージがあったウイスキーの魅力を、女性に向けて発信し続けてきたKaoriさんの活動は、低迷期を脱し急激な上昇トレンドを描く日本のウイスキー市場において特筆すべきものだろう。
Kaoriさんの情熱と温かな人柄に惹かれて集う参加者たちが、女性だけで集まって、純粋にウイスキーを愉しむ。そんな「女性ウイスキーの会」の参加者の9割は一般のウイスキーファンであり、その入り口は広くウイスキー初心者にも開かれている。女性のウイスキー仲間が欲しい人にはぜひ、その魅力的な集いへの扉を開けてもらいたい。
文:ウイスキージャーナリスト 西田 嘉孝氏
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