単独インタビュー第13弾 2011年末特別企画 「目白田中屋 栗林氏を迎えて(1)」
「目白田中屋さん テイスティングルームにて 9月某日 上着が欲しくなる頃」
Kaori(以下K):本日は、お忙しい中本当に有り難うございます。こちらは?
栗林さん:1991に発売されたマッカラン。
K:91年ですか。やはりマッカランがお好きだったという事ですか?
栗林さん:それは好きでしたよ。マッカランとかファークラスとか、色々。僕ら「あー凄い酒だな」と思ったから。マッカランは好きですね。スプリングバンクも好きですし。
K:スプリングバンクはお好きだと仰っていましたものね。
栗林さん:アードベッグは全然売れなかったですもの。
K:そうなのですか。
栗林さん:うん。
K:それは?
栗林さん:僕が初めて輸入したアードベッグ。1988か。
K:その時は全然売れなかったのですか?
栗林さん:全然駄目ですよ。全然売れませんでしたよ。
K:試飲をして頂いても、ですか?
栗林さん:試飲をしたら不味いって言われたもん。不味いって言われたもんな(笑)。カリラとか、全然売れなかったもんな。僕は田中屋へ来る前に組嶽って友達と二人でやっていて。
K:丁度栗林さんが田中屋さんにいらっしゃる前の事もお伺いしたいと思っていて。組嶽さんですね?
栗林さん:島根の酒屋さん。
K:栗林さんが島根にいらっしゃったわけではないのですよね?
栗林さん:ではなくて。組嶽の息子が東京に修業というか来てたんですよ。
K:そうなのですか。
栗林さん:うん、大学行って、ま、バイト仲間だったんですけれど。
K:はい。
栗林さん:組嶽は酒屋の息子でもう100年以上続いている酒屋で、酒屋でもバイトしてゼストってBarでバイトして僕もバイトしていたんですけれど。そこで知り合って、組嶽はその時バーボンブームだったんですけれど、その時に「モルト、シングルモルトっていうのが流行るんだよ」って言って(笑)。
K:その方がですか?
栗林さん:うん。2人で会社作らない?って、なって。
K:それはおいくつの時ですか?
栗林さん:これ入れた時が88年、89年位だから、87年位かな会社を作ったのは。
K:そうしますともう?
栗林さん:もう24年位前だから24歳の位ですよ。23、4歳位で2人で金出して、モルトとハイランドスプリングというミネラルウォーター。
K:ええ。
栗林さん:これからミネラルウォーターもいいんだよって。その時はミネラルウォーターって全然。水に金出すの?っていう時代で。これはモルトウイスキーの仕込み水で美味しいんだよと。と言って入れたんですけれど全然売れなくて。
K:でも後々は来ましたよね。お水のブームが。お水にお金を出して買うようになりましたよね。少し早かったのでしょうか?
栗林さん:だからよく言うんですけれど、モルトも水もそうなんですけれど、後2年やっていたら僕たちは本当に大金持だったね、ベンツに乗っていたねと。でも後1年やっていたら借金だらけだったね、と(笑)。
K:ええ(笑)。
栗林さん:ま、やんなくて良かったんですけれど、続けなくて。組嶽って凄い味も分かるし、センスも良かったし、僕は全然ラフロイグも、アードベッグも分からなかったけれど。2人で金出して、最初は僕がイギリスへ行って、ミネラルウォーターを探してハイランドスプリングが良いって言って見付けて、向こうの会社で何十種類も買ったんですけれど、40本位買ったかな、それで日本に持ち帰って、組嶽がハイランドスプリングが1番格好良いし、いいとか言って。モルトの仕込み水というのはそんなに少なかったからその中から選んで少なかったから、ハイランドスプリングを選んで、その翌年は組嶽がスコットランドへ行ってゴードマックファイルがまだエージェントを持っていなかったら、マックファイルからアードベッグやポートエレン、後スキャパも入れて、輸入して、で銀座のBarとか開けてちょっとずつ飲んでもらって、全然アイラなんて飲ませると「これは美味しくない」と。「美味しいのはこういうお酒だよ」って言って、今でも覚えているけれど、あるBarとか行って飲ませてもらったのはロイヤルサルートとか(笑)。
K:ええ、はい、はい。
栗林さん:あの時アードベッグ、ポートエレン、カリラ、スキャパ、グラント、グレンリベットとか。グレンリベットとかは凄い高いのを入れたんですけれど。中で一番まともなのはグレングラントって言われて。
K:ええ。
栗林さん:スキャパも1963とか入れて、アードベッグは1970を、カリラもそうですし。
K:今なら皆さん大変な事になっていますよね。
栗林さん:もう最後お金が続かないから、投げ売りに近かったですもの(笑)。
K:難しいですね。
栗林さん:全然売れなくて、組嶽と一緒のマンションに住んでいたんですけれど、倉庫代が払えなくて、勝手にマンションの屋上に400ケース位積み上げて。
K:ええ。
栗林さん:エレベーターもないマンションだったから2人で人海戦術で積み上げて、40ケース積み上げて、そしたら大家さんに怒られて、勝手にこんな所、屋上に400ケースも水を積んでどうするんだって。でも下ろすのも大変だから早く売ってねって(笑)。
K:(笑)。理解がある方、だったのですね。
栗林さん:そりゃそうですよね。20歳代前半の若造が金を全部水に突っ込んで、エレベーターもない所によくも持ち込んで持って来たねって(笑)っていう感じで。
K:気持ちで運ばれたのですね。
栗林さん:下ろすのも大変だから早く売って下さいって。そんな時代だったから。
K:結局400ケースはどうされたのですか?
栗林さん:売りましたよ。当初の予定では3カ月、1コンテナ入れたから、800、900ケース位入れたから。400ケースは屋上だから残りの400ケースは部屋で。1年半位掛かったかな。1年以上は掛かったな。当初の予定では、3カ月に1回コンテナを入れようという予定だったから。Barの人もミネラルウォーターをチェイサーに使うなんて考えもなくて。あっても凄い安い水だったりして。あった事はあったんですけれどある所の安い水を使っていたりして。僕は滅茶苦茶ですからね。色々言うから。勘で買ってくれて、テイスティングもそういうのじゃなくて、勘で買ってくれていたし。お客さんも何も知らないし、アイラ、モルトっていう事自体も認識なかったんで、まあ、普通のスコッチウイスキー、ブレンデッドですよね。それとモルトの違いをどう説明するか、から入って。
K:ええ。
栗林さん:ワクワクしていましたもんね。カリラが読めなくて(笑)。僕ら商品名カオル・イ・ラとしていたから。
K:そのままならそうですものね。
栗林さん:はい、読み方知らなくて(笑)、カオル・イ・ラって言う人は何か古い人だね。
K:(笑)。でもそれですと昔を知っているという事ですものね。
栗林さん:カリラって言うんだ、って、数年してから気が付いたって。
K:でも読めないですものね。
栗林さん:その後、あれだったな。それからアードベッグ全然売れなくて。有楽町西武さんの「酒蔵」結構買ってくれていたんだよね。マックファイル系のやつは買ってくれていましたね。その辺はバブルの終わりくらいでしたよね。89年から90年位は。スコットランドへ3回目位に行った時は、何で売れないんだろうと思って、スコットランド人に聞いたら、「実はモルトが一番売っている国はイタリアなんだよ」って。
K:はい。
栗林さん:売っているって言っても量じゃないんですけれど。ウイスキーの中でモルトの占めるシェアって当時も今もそうなんだろうけれど、アメリカ、フランスでも10%以下位だったんですよ。ウイスキーを100として、その中のモルトウイスキーは。でもイタリアは30%以上モルトが占めていたんです。
K:ええ、凄い。
栗林さん:それを聞いて「えーモルトがそんなに売れる国があるんだ」って思って、アバディーンから電車に乗ってローマまで行ったんですよね。ドーバ海峡を渡って。行ったら全然。でも凄い面白かったですね。結局グラントの5年とかマッカラン7年が普通のバールにいっぱい置かれているだけなんですけれど、でもその時ローマ行って、ミラノ行って、モルトがいっぱいあって見た事のないラベルがいっぱいあって格好いいとか思って。
K:はい。
栗林さん:それで色々教えてもらって。イタリアからもいっぱい入れて。
K:イタリアからですか?
栗林さん:うん、イタリアから。イタリアからカリラ12年とか15年とかのオレンジラベルを、後ローズバンクの20年とか15年とかマッカランが軒並み1960年代、ヴィンテージシリーズをガッツンガッツン入れましたよ(笑)。
K:凄いですね。(2へ続く)
※次回掲載予定日 12/2(金)
こんなご苦労があったんですね。続きを楽しみにしています!
ウイスキーねこ様
コメント有り難うございます!
そうなのですよね、私も伺って初めて知りました。
引き続きどうぞ宜しくお願い致します。
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