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単独インタビュー第13弾 2011年末特別企画 「目白田中屋 栗林氏を迎えて(2)」

2 12月 2011 5,880 views No Comment

 

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栗林さん:有楽町西武さんにも色々と買ってもらって、それでマッカランは売れたけれど他は全然売れなくて。マッカランの7年も入れたし。だけど凄い格好いいラベルがあって。ミラノで見た時、その1つがサマローリさんのラベルですけれど。 

K:ええ。 

栗林さん:この人は誰なのと聞いて、1時間位の所に住んでいるよと聞いて、僕はサマローリさんはいっぱいお酒を持っていると思って、コレクションもしているんだろうと思ったんでコレクションを買えたら良いなと思っていたら、何て事のない豪華なマンションに1人で住んでいたという(笑)。夕方6時位かな、日本から来た、あなたのウイスキーが欲しいんだけれど、って突然夕方行って。だってイタリア語出来ないし、電話何かしても駄目だから住所だけ聞いて突然行って、でもその時4時間位行ってしゃべったかな。 

K:ええ。 

栗林さん:英語はその時ちょっとだけ話せたんで、幸いサマローリさんも英語が話せたんで。今は話せないみたいですけれどね。サマローリさんに色々教えてもらいましたね。1番勉強になったのは、樽によって味が違うから。サマローリさんは簡単に言うと、スプリングバンクととても仲が良かったので、ダッシーズから出していたのを買っていたのですけれど、僕の考えと言うか、日本の人達は結局アードベッグならアードベッグでどこも同じでアードベッグじゃないと言っていたんですけれど、例えばイタリアから変なボトルを入れてもグレングラントならグレングラントじゃないという普通のオフィシャルのグラントとか僕がボトラーズのを持って行っても、サマローリさんのボトラーズを持って行っても「グレングラントじゃん」っていう感じだったんです。 

K:ええ。 

栗林さん:「でもこれ樽で違うんですよ」、と言っても訳が分かんなかったし。サマローリさんはそこを凄く協調していて。どの樽を選ぶかが重要で、ずっと凄い印象に残っているのは「選ぶって言うのは1番身近な芸術なんだ」って言ってセレクティングアートだか、選ぶっていうのがその人の1番身近な表現であって、自分が何を着るか、自分が何を食べるか、それは自分の表現なんだと。 

K:ええ。 

栗林さん:こういうジーンズを着て、こういう黒い服を着てそれがその人の表現なんだと、それが芸術なんだと、作る事だけが芸術ではなくて選ぶ事も芸術なんだと。 

K:ええ、はい。 

栗林さん:で、彼はどの樽をサンプリング、その時はスプリングバンク、ダッシーズからだったんですけれど蒸溜所とも仲良くて当時売ってくれていたんで。売っていてくれていたらしいんですよ。ジャッコーネにしろなんにしろ。モルトが売れなかったから。モルトが売れなかったからこんな樽でもいいの?って。くれたらしくて。ギリーだとかモリソン系と仲良くて、ハイランドパークも直接仲良くて選び放題で。 

K:樽を頂けたという事ですか? 

栗林さん:自分の好みの樽を選べたんです。それがアートだと言って。だからマックファイルのメーカーとは全く違いますよね。マックファイルとか設備を持っている人達がバーンと買って、仕入れたものをボトリングして何でも売るんですけれど、サマローリさんはボトリング設備もなく、何が重要かと言って選ぶ事だけなんだと言って選ぶんですよね。その樽を選ぶんですけれど彼の凄い懐は、ニュースピリッツ確か樽に入れて4カ月以内は凄い安いんだって。これは土屋さんがサマローリに会いに行ったよって教えてくれたんですけれど、87年の樽を100樽買ったって言っていたかな。 

K:ええ。 

栗林さん:87年当時。あの樽に詰めた時。ほとんどニュースピリッツを100樽買ったって。数字は土屋さんに確かめないと駄目ですけれど。 

K:はい。 

栗林さん:100樽買って、熟成の時期を選択。当時全然売れていない酒ですよ。それで80なん年てモルトなんて売れていなくて、アイラなんて全然売れていなくて、皆ライトな時代で、ヘビーピート、アードベッグすら81年位から。キルダルトンとかノンピート系が。その時にロングロウを100樽買ったって凄いよな、と思って。それで買った上でサマローリさん熟したのも買っているんですよ。 

K:はい。

栗林さん:熟した物を買う選択もあるし、若いのを買っていつ瓶詰めする時期も選択だと言って。サマローリさんは多分100樽買って、気に入らないのはリセールして行ったみたいですが。 

K:リセールとはどういう意味ですか? 

栗林さん:他のボトラーに売るんですよ。 

K:ええ。 

栗林さん:他のボトラーに。それで樽ごと売って。サマローリさん自身で樽詰めしたのは20何本かと思うんですよ。サマローリラベルで。20数樽ですね。で、これはフランク・マカリーさんから聞いたのですが、当時スプリングバンクの蒸溜所所長さんから聞いたのですが、サマローリは気ちがいで(笑)、彼は栗の木の樽で寝かしてくれって、ロングロウを。っていうリクエストが来たんだって。グラッパだとアカシアの木や栗の木があるんですよ。 

K:はい。 

栗林さん:何か調べると確か91年から調べるとオーク樽と記載されているんですけれど、80年代はまだオーク樽という表記がなかったんですよね。スコッチでは。 

K:という事は? 

栗林さん:何で栗の木を選んだかというのは、保湿性に凄く優れているんですよ。海沿いだけれどあまりスプリングバンクは、ラック式だから乾燥している面もあるからだか分からないんですけれど。材質的には、保湿性に優れているから。何かそういう全て自分は作る人じゃないから、色んな面で、何を買うか瓶詰めするか樽をどうするか、全部セレクティングアートだと言ってね。輸入したのは92年。その後に、それが組嶽を潰した原因(笑)。 

K:(笑)。 

栗林さん:組嶽を潰した原因は、サマローリだった(笑)。でも信濃屋さんの長井社長は、モルトやりたいって言って、「栗林君が入れたものを何でも買うから」って言って。長井社長と田中屋の田中社長は、Barの人以外では「もう何でも買うから」と言って、僕らが入れたマックファイル最初のこういうのとかもイタリアから入れたローズバンクやカリラとかオフィシャルのイタリア向けのものとかもサマローリも買ってくれて。それでも買ってくれるんですけれど、そこから先が買ってくれなくて(笑)。僕ら12本買って、12本買ってくれたらでかくて、「信濃屋さん、すげー、田中屋さん最高!」と言っていたんですけれど、Barは1本ずつで、入れているケースは何百ケースだから。 

K:そうですよね。 

栗林さん:12本一気にと言ったんですけれど、信濃屋さんも田中屋さんもそこから先が売れないから、リピートがなくて。92年に入れて、94年に2年後位に組嶽は解散致しました。売れなくて。もう駄目だって言って。 

K:でもその資金自体はどこから? 

栗林さん:最初は2人で100万円ずつ出し合って、後は夜必死で働いて、生活費を稼いで酒を買う金を稼いで、バイトしまくったもんな。 

K:どの様なバイトをされたのですか? 

栗林さん:ゼストとか、夜の世界ですよね。朝までやっているから。 

K:朝起きて又営業ですよね。 

栗林さん:幸いBarの人は夕方からでしたから。4時位から信濃屋さんや田中屋さんやホテルのBarとか夕方と営業時間前になるべく、飲みに行くと大変な事になるから。 

 K:そうですね、はい。 

栗林さん:1日のバイト代が消えちゃうから。 

K:そうですよね。 

栗林さん:だから2人1部屋で。でも面白かったですけれどね。でも本当に全国色んな人がなんか面白がってくれたし。 

K:でもその時ですとメールですか?それともお手紙ですか? 

栗林さん:その時はメールがなかったから。 

K:そうですよね。お手紙を書いて? 

栗林さん:手紙をコピーして郵送して、24時間体制で配達も「夜はいつでも配達します。」って(笑)。 

K:凄い。 

栗林さん:面白かった。でも皆凄い。新しい商品が出る度に飲みもしないで買ってくれていたから。「いちいち開けなくていいよ」って言ってくれて。売りゃいいんだろうって(笑)。

田中屋に僕が入ったのは94年かな。最初は1日5本とか10本位だったかな、売れていたのは。 

K:でも5~10本は売れていたのですね。 

栗林さん:うん。田中屋に入ってから。 

K:その時出たものは、アイラではないですよね? 

栗林さん:うん、色の濃いものですね(笑)。 

K:ええ。 

栗林さん:マッカランとか。安かったですしね。3,980とかでしたから。安かったんですよ、安くて、美味くて。 

K:そうですよね、安くて、美味しくて、美味しくて、安くて。 

栗林さん:たまんなかったですよね。誰も分かんないだろうなと思って(笑)。 

K:ええ。 

栗林さん:同級生でモルトの話をしたって誰も知らないですよね。今は結構昔の同級生が「モルトって美味しんだよ」って言って教えてくれるんで(笑)。「楽しい」とか言って。 

K:ええ。 

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栗林さん:そういうのを聞くと、ああ凄い、広がったんだな、と思いますね。でも本当に楽しかったな。 

K:逆に組嶽さんとお会いしなければ、栗林さんはそうならなかったですか? 

栗林さん:ない。僕何にもやる事なかったから。やりたい事がなかったから。 

K:その時ですか? 

栗林さん:お金持ちになれたらいいな、位。 

K:え? 

栗林さん:何をしたらいいか分からない位。プータロー人間じゃないけれど。 

K:その時に丁度お会いして、おおっと思われて?何かふつふつと思われていて? 

栗林さん:何か面白そうだなと思って。最初飲んでもあまり美味しいとは思わなかったから。 

 K:ええ。 

栗林さん:でも面白いなと思って。あとお客さんから聞かれるから、色んなお客さんから「これどういうの?」と。「あ、何だろう」と真剣に調べたり、こっちの方が美味しいと言われたけれど、「えー美味しいと思わないけれど」と思って美味しいと分かるまで飲んでみようと思ったり。「1本飲んだら美味しいと分かるかな?」と思ったり。結局翌日何だか記憶にないなと思っていたんですけれど。 

K:栗林さんは集中型なのですか?脇も見ずにずっと。 

栗林さん:というか見栄っ張りなのかもしれませんね。人に何か頼まれたり、言われたりするとちゃんと真面目にしなきゃ、っていう。これ美味しんだ、分かんねーな、と思ったら絶対飲めば分かるんだと思って、飲みが足りないんだと思って。 

K:それは分かる様な気がします。 

栗林さん:100万(円)位美味しい食べ物や飲み物に使いなさいって教えてもらって。馬鹿だから本当に100万使おうと思って、くだらないものを1,000円で1,000個食べるんじゃなくて、人が良いというものを100個でも10個でもいいからそういう使い方をしなさいっていう。そういう風にしたら何となく、最初はモルトも分からないし、何か良く分からないけど、走り出したから頑張んなきゃという。 

K:ええ。 

栗林さん:走り出したら。 

K:そうですね。 

栗林さん:そうそう、そうそう。そういう感じですよね。だから今の人達は味も分かるし凄いなと思いますよ。 

K:そうですね。皆さん、凄いですよね。 

栗林さん:情報も色々知識もあるし、僕ら皆なかったですからね。なくて、現物見て、うん、何だろうね?って言って(笑)。 

K:(笑)。 

栗林さん:僕らもBarの人もどういう味なんだろう?っていう、買ってから悩むという。今は買う前に調べるというのが、勉強しているし分かっているし。僕らは味も分からないし、自分達の美味しいというのが良く分からないし、ま、いい加減でしたね。 

K:でもそういう事があったからこそ、今だと思うのですが。

栗林さん:今は。でもお酒って格好良かったんです。酒も格好良かったし、飲んでいる人も格好良かった。 

K:そうですね。 

栗林さん:凄く憧れましたね、皆。有名な人も有名じゃなくてBarに来ている人も凄い格好良くていっぱい教えられたから、「あーこういう風にするんだ」、「格好いい人ってこうなんだ」って。 

K:はい。 

栗林さん:格好付けている奴は格好悪くて、格好いい人は格好付けなくても格好良いんだって(笑)。 

K:それはそうですね。と、思います。 

栗林さん:そういう人たちがいっぱいいたんで。で何か本当にあれじゃないですか?Barって横並びで年齢も職業も関係なしで、本当に自分の親父みたいな、おじいちゃんみたいな人と普通に対等に話して、「君は酒屋なんだって?」って、「このお酒はどういうお酒なの?」っていう感じで、僕が「こういうお酒です」って言ったら、「今日は1つ勉強になった、良かったな」っていう様な事を言われると、「あーっ」と思って。 

K:嬉しいですね。 

栗林さん:もっと頑張んなきゃっていう。こんな人にいい加減な事は言えないっていう。 

K:そうですね。 

栗林さん:皆優しいし、格好いいですよね。飲み方だとか人の接し方だとか。ほとんど学校よりもBarで学んだという。で、モルトの良い所は、ビールや安い酒をやっていなくて良かったな、と思うのは、良い酒っていうのは良い人を呼ぶんですよね。 

K:はい。 

栗林さん:本当に。これが焼酎の世界が悪いとかそういう事じゃなくて、ビールの安売りだとか焼酎の安売りだとかそういうのを大量に売って儲けていても今みたいな幸せ感はなくて。僕は金はないけど、人には恵まれたなと思っている。 

K:ええ。 

栗林さん:それは凄く恵まれている。全部モルトのお陰だなと思っている。だからずっとやって行きますね。 (3へ続く)  (1へ戻る)

 

※次回掲載予定日 12/9(金)

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