単独インタビュー第18弾「THE MASH TUN TOKYO 鈴木 徹氏を迎えて(最終章)」
鈴木さん:後、ウイスキーで、っていう事になると、勿論、数多くびっくりする様な美味しいウイスキーを飲んだ時は、すげーなーって言う時もありましたけれど、ウイスキーそのもので、って言う事ではないんですけれど、例えば凄く感動したっていうか、あーっと思った瞬間と言うのは、初めてスコットランドに行った時に、まぁ、その時はどっちかと言うと連れて行ってもらったというに等しいんですけれど(笑)、連れて行ってくれた方の運転で、エジンバラからスペイサイドまで走って行き、ダフタウンまで行ったわけですよ。坂を上って行って、建物の陰から、時計台がすーっと出て来るんですよ。その時計台を見た時に、写真でしか見た事がないから、
K:ええ。
鈴木さん:あー、ついにここに来たんだな、と。今でもスペイサイドが好きですけれども、昔からスペイサイドに思い入れが何故かあったので、特にダフタウンの時計台っていうのは、凄く自分の中では象徴的なものだったので、それが坂を上がりながら建物の陰からちょっとずつ出て来るんですよ。その時に、あぁ、ついに来たんだっていう、あれは感動と言うのかね、何て言うんでしょうね。えー考え深いものがありましたね。あれを感動と言うのでしょうね(笑)。
K:ええ(笑)。
鈴木さん:涙する、とかそういうのではないのですが、何かこう...
K:込み上げて来る思いが?
鈴木さん:おぉー!みたいな、それはありましたね。
K:それは何年前ですか?
鈴木さん:15年くらい前でしたかね。96年か95年か。それより、その前にスコットランドに着いているんだから感動しろよ、って言う感じなんですが。ここはスコットランドだと思ったんですけど。やっぱりウイスキーをやっていて、自分が好きな場所へ行き、象徴的な物を見た時に、何かあるじゃないですか。
K:そうですね。それはそう思います。
鈴木さん:でも余市の蒸溜所も凄くそういう意味では幻想的でね、これはいいな、と思いましたね。山崎や白州と違って、スコットランドの蒸溜所とも趣が違って妖精が出て来そうな感じでね、丁度霧が掛かっていたんですよ、僕が行った時に。
K:ええ。
鈴木さん:小雨が降っていてね、もやがあって、霧と言うかもやが。でっかい建物がドーンという感じではなくて、敷地の中に、ポツン、ポツンとこうちっちゃい建物がいくつもあって...
K:はい、凄く素敵ですよね。
鈴木さん:凄い良い場所だなと、他にない。
K:ですね。
鈴木さん:蒸溜所かどうかは分からないですけど、これが余市なんだなと、余市蒸留所はこういう感じなんだな、と。凄く感慨深いものがありましたよね。山崎に行ってもあまり感慨深いものはないんですけど(笑)。でかい建物がドーンと。
K:そうですね、確かに、建物が最初に見えますね。
鈴木さん:あの佇まいが何とも言えないですね。そんな感じでしょうかね。
K:有り難うございます。
K:次は、募集を掛けさせて頂いた方からのご質問なのですが、こちらの方はウイスキー繋がりの方ではなくて、Barでご一緒させて頂いた方からのご質問なのですが宜しいでしょうか?
Q9 1つは、今迄に印象に残っているモルトは何でしょうか?又、それはどのシチュエーションで飲みましたか?というご質問を頂きました。
鈴木さん:そうですね。1番印象に残っているモルトウイスキーと言うと、本当言うと1番2番付けられないので凄く難しいんですけれど、例えば自分が今迄飲んだモルトウイスキーの中でベスト3とかベスト5とか本当に上位にランキングしているものはあるわけですよ。例えばその中の1つが、例えばボウモアの1964のフィノシェリーカスク。これは、10年か10年以上前に出たやつなんですけど、安かないですけどね、それは商品化する前に、それこそ山岡さんがボウモアに行った時にサンプルで貰って来たんですよ。
K:ええ、ええ。
鈴木さん:これちょっと飲もうよ、って、持って来てくれて「美味いよ」って。凄く美味かったんですよ、びっくりする位。何ですか、これ、と。こんなのあったんだよ。と
K:ええ。
鈴木さん:これがね、あまりに感動的に美味かったので、高かったけど発売されたら買っちゃったんですよね。当時で1,000ポンドでしたね。もっと安く買いましたけれど。それを飲んで、カスクサンプルの方がより良かったんですね。より良かったのは、山岡さんも同じ意見で「サンプルの方が美味かったけれど、商品として出た中でも上位1、2位を争う位美味いよね、美味しいよね」と山岡さんも話したし、僕もそう思っているし。それが縁があって最初はサンプルで飲めた、その後に発売して買えたという事、それも前の店で開けて、試飲会で出しちゃったんですけど、
K:あ、そうなのですね。
鈴木さん:やっぱり美味かったし、その前にウイスキーマガジンライヴだとボウモアのマスタークラスでも出たりしたんですよ。それでも飲めたし、1番最後はもう2007年だから5年前になるかな、ロンドンでウイスキーエクスチェンジのオフィスに行った時、社長のスキンダー氏がちょっと後ろ向いて何か注いでくれて「これ何だと思う?」って言われて、「何これ?」って言ったら、シークレットだって。
K:ええ。
鈴木さん:飲んでみろ、って。僕はボウモアをブラインドで飲んで当てた事がないんですね。
K:当てた事がない?ええ。
鈴木さん:で、やっぱり当らなかったんですね。でも分からないけれど、飲んだ事はある、と。「それは飲んだ事があるはずだ」と。それは俺から1本買っている、と。
K:(笑)ええ。
鈴木さん:それがヒントだから分かれよ、という、駄目だなと。ジャジャジャーンと音付き(笑)で出されてそれだったんですよ。
K:そうだったのですか。
鈴木さん:それで飲んだのが最後ですね。そんなもの開けているの?って聞いたら、お前みたいなのが時々来るから、開けているんだよと。売りもんじゃねーよと。
K:ええ。嬉しいですよね。
鈴木さん:一緒に飲もうぜ、って言う感じで飲ませてもらったんですけど。笑っちゃいますよね。
K:ええ。
鈴木さん:印象に残っているものの中の1つです。それがね。
K:シチュエーションと言うと、山岡さんとの?
鈴木さん:シチュエーションで言うと、そうですね。衝撃が走ったのは、サンプルを飲んでこんなものがあったのか、というのと、後はそんなもの開けて飲ませているヤツがいたのかという、ま、タダで飲んじゃいましたけれどね(笑)。今迄も何回か飲む機会はあったんですけれどね、ただこんな事が自分の中で印象的な事ですね。今迄飲んだ中のモルトウイスキーの中で本当に詳しく思い出して行ったら、もっといろんなものが出て来ちゃうと思うんですけれど、コレが普通にパッと出て来る中のベストウイスキーのひとつかな。
K:ええ。
鈴木さん:今まで飲んだ中でベスト3と思われるもの。全部そのウイスキーエクスチェンジのスキンダー氏に売ってもらったかな、すべて彼が勧めてくれたものだったんで、彼との出会いは凄く大きいですよね。ウイスキーの関係の仕事をしている中でね、彼との出会いは本当に大きいです。初めて会ったのが1999年の3月ですから長い付き合いです。その時は現ウイスク・イーの元木君も一緒だったんですよ(笑)。彼も当時はまだバーテンダーでしたが。
K:有り難うございます。もっとお伺いしたいのですが、お時間もそろそろないと思いますので。こちらで最後になります。
Q10、鈴木さんから一言是非お願い致します。こちらのサイトは、ツイッター、SNS、FBでもご紹介させて頂いておりますので、皆様に向けて何かございましたら、是非。
鈴木さん:今ね、まだまだ景気もよろしくないし、特に震災の後は外で楽しむっていう事が減って来ちゃっていると思うんですよ。勿論、家飲みっていうものは悪いものではないし、それはそれで愉しみ方の1つだと思います。いい事だと思うんですけれど、別にウイスキーじゃなくてもいいんですけど、外に出て、時々は非日常的な場を楽しんで頂けたらなと思います。それは僕達Bar業界が思っている事だと思います。是非、ウイスキーを含め、Bar業界を盛り上げて頂く為の1番の主役というのはお客様なので、みなさん是非Barに飲みに行ってくださいね(笑)。
K:(笑)。
鈴木さん:(笑)。
K:はい、有り難うございます。
鈴木さん:後は、さっき言ったみたいに、1本のウイスキーを口開けから最後まで何回か飲んで頂いて、その変化も愉しむ様な飲み方もしてもらいたいな、勿論それは自分でね、家で飲んでいれば出来るんですけれど、又家で飲むのとね、Barで飲むのはお味が違ったりするんでね。
K:違いますね。それは本当にそう思います。
鈴木さん:Barで愉しむウイスキーを又思い出してもらいたいな、と思いますね。
K:そうですね。はい、有り難うございました。
鈴木さん:もう大丈夫ですか?
K:はい、大丈夫です。(10へ戻る)
Kaoriの総論
私がTHE MASH TUN TOKYOさんへ伺うきっかけになりましたのは、ウイスキーを好きになり少し経ちました頃、「 MASHさんは行くべきでしょう。」、とある方から教えて頂きました。お会いした瞬間に「もしかしたらお話し辛いお方ではないかしら?私の少ない知識でお話をして頂けるのだろうか。」という事を考えてしまいました。その様な中、お話をさせて頂くと色々とお話をしてくださり、一瞬で私の思い込みなのだと思わされました。その後伺わせて頂く様になりましたが、鈴木氏が出されるウイスキーはいつも私にピタリと来るものを勧めてくださるので、楽しみで安心してお願いしております。ウイスキーに対するお考えを熱心にして頂き私も真剣に伺っておりますが、時折お見せになるりぼんちゃんのお話をされる時の鈴木氏のお顔が又違った表情をされますので特に印象的でございます。ウイスキー界の大御所でいらっしゃいますからこちらからお伺い致しますと色々と教えては頂きますが、嗜み方等難しい事は1度も仰った事はなく自由に愉しませて頂いております。私も鈴木氏の様に今迄以上に物事を真剣に考え伝え、それでいてお相手の方にその考えを押し付けない雰囲気を出す事が出来たらと思いました。
(今迄取材させて頂きました皆様も大変ご多忙の中ご協力頂いておりましたが、鈴木さんは特にイベント開催やご準備の中ご協力頂きました。誠に有り難うございました。)
取材協力 THE MASH TUN TOKYO
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